■反射型液晶の欠点を補うフロントライト

反射型液晶(HR液晶)の問題点についてはundocumented ZAURUSで詳細に解説しますが、外部の光を反射するという構造から暗いところではほとんど画面が見えません。

この問題はユーザーによって影響度が違いますが、暗いところで見えないという問題点はかなりユーザーの不安をあおったようでビジネス用TOKYO'98の会場で急遽フロントライト付きHR液晶タイプのザウルスを参考出品しました。

ビジショウの展示品はプロトタイプのためこれをもって評価するのは難しいのですが、暗いところでの視認性の問題に関してはクリアできるレベルに達していたと判断しています。

busi_fl_off.jpg (6832 バイト) busi_fl_on.jpg (6244 バイト)

フロントライトOFFの状態

 撮影時の状態ではかろうじて表示内容は見えるものの快適に利用できるというレベルではありません。

フロントライトONの状態

 フロントライトをONにすると通常のバックライト液晶より鮮明さに欠けるものの表示内容の確認や入力に関しては問題無くできます。

■フロントライトの構造

フロントライトは基本的にバックライトと同じインバータ蛍光管(冷陰極)を利用し、液晶の前面から光を当てるように導光板を配置した構造になっています。(通常のバックライト液晶は液晶裏側から光を透過)

蛍光管ユニットや導光板などの追加構造物によりバックライトとほぼ同サイズになります。


■フロントライト付きHR液晶のメリット/デメリット

・メリット

1.使う場所を選ばない

暗いところで利用できるようになるという点が最大のメリットです。

「使えない場所がある」という制限が無くなり「ビジネス」というジャンルで考えると使う場所を選ばない死角のない機種といえます。

2.バックライト液晶に比べてバッテリが長持ちする

バックライト液晶はバックライトを切ると全く画面が見えませんが、フロントライト液晶はフロントライトを切っても画面が見える場合があります。

そのためバックライト液晶よりはバッテリが長持ちする可能性があります。


・デメリット

1.厚さ/重量がバックライト液晶と同じ

フロントライトを含めた液晶パネルユニットサイズは反射型液晶タイプとほぼ一緒になり、薄く/軽くできるというHR液晶のメリットは無くなります。

2.純粋なHR液晶に比べて消費電力が増える

メリットとデメリットが半々になりますが、フロントライトとバックライトの消費電力はほぼ同一で、点灯時間が同じならバッテリの消耗も同じになります。

純粋なHR液晶搭載機はバックライト液晶搭載機の約2倍の稼働時間がありますが、フロントライト付きHR液晶の場合フロントライトを点灯する時間が増えると稼働時間が激減します。

3.画面の鮮明度が低い

これはバックライト液晶とプロトタイプのフロントライトHR液晶の比較になりますが、HR液晶は画面の鮮明度に欠けます。(色が浅い)

実用的には問題無い項目ですが、バックライト液晶に慣れているとちょっと不満を感じる部分です。


■総評

HR液晶にフロントライトという組み合わせは良い選択だと思います。

可能な限りフロントライトをOFFの状態で運用し、「いざ」というときにフロントライトを点灯するような運用で稼働時間を稼ぐことができます。

このような運用ができるためバッテリーが長持ちし、通信を行ったとしても丸1日はバッテリー交換なしで運用できるでしょう。(標準的な利用想定でバックライト液晶比1.5倍ぐらいかな?)

ただ、HR液晶が目指していた薄型軽量の端末に関して明確なコンセプトを具現化するモデルが登場していないという点も事実であり、フロントライトは技術者と営業の妥協の産物なのかもしれません。


HR液晶のコンセプトを活かしきった端末というのは任天堂のカラーゲームボーイが最初のものであるというのが時代を反映して面白いのですが(^^;


補足

一般用ザウルスとしては「ザウルスカラーポケット」にフロントライト(スーパーモバイル液晶)が搭載されました。

これは単三乾電池2本で動作するカラー液晶PDAです。

評価としては「見にくいことは無い」が大勢を占めていますが、内蔵モデムを利用した通信中にフロントライトが点灯できない、ライトをつけた場合には電池を意外に早く消耗するなどの問題も指摘されています。