■カラーザウルスの悪夢

 カラーザウルスが発表された当時、インターネット対応、高速処理、大容量、カラー画面、デジカメ、PCMCIAスロット等々画期的なPDAとして期待されたのですが、ことごとく使い物にならず「弁当箱」とか「お荷物」と呼ばれるようになりました。

 PIシリーズから乗り換えたユーザーからは役立たずのレッテルを押され、その後またPIシリーズを買い直さざるを得ない羽目になり、はじめてカラーザウルスを購入したユーザーは何がなんだかわからないものとして愛想を尽かされています。(ちょっと言い過ぎか(^^; でも私はこう思う)

 本来一石二鳥、三鳥を狙った複合機がそのどれもを満足なものとできなかった二兎を追う者一兎を得ずになってしまったどうしようもないザウルスシリーズの鬼っ子がカラーザウルスです。

 市場に未だに残る不良在庫はザウルスチームの汚点となっているに違いありません。(新品がまだ売っているのにはあきれてしまいます)

 こういった機種を購入したユーザーは本当に不幸で人体実験されているとしか思えない理不尽な仕様に悩まされ続け、数度に渡るバージョンアップ(未公表バージョンアップ)を経ても改善されませんでした。

 これらの問題はかなり初代パワーザウルス(MI-500系)で改善されましたが、 それでも見切り発車したとしか思えないケアレスなバグが散見されます。

 「シャープの初代は買うな」の格言がありますが、カラーザウルスはまさにMIシリーズの初号機でありその格言通りの結果となったと言えます。


■カラーザウルス颯爽と登場...

 カラーザウルスが始めて公の場で一般ユーザーの前に現れたのは96年のビジネスショウだったと思います。

 展示されているという話を聞きつけて見に行ったのですが、その時のインパクトは大きく大画面のカラー液晶であること、デジタルカメラが使えること、インターネットメールやブラウジングが可能なことなどその先進性に驚かされたものです。

 しかし、デモ機にユーザーが触れることはあまり歓迎されず説明員がデモをしている最中にもハングアップするという製品にはほど遠い仕上がりでした。

 その時点で発売が7月〜8月といわれており、果たして本当に間に合うのか一抹の不安を感じていました。


■幻のカラーザウルス

 その後カラーザウルスの発売日がシャープのホームページで96年6月25日とアナウンスされ、私もその日にラオックス電子文具館(現在のモバイル館の前身)に買い出しにいったのですが影も形もありません。

 当時はPIシリーズも発売されており、大抵の機種は予定通りの発売日に店頭に並んでいました。

 インプレスのPCウオッチの情報でもカラーザウルスの発売は確認されておらず、PCウオッチ編集部がシャープに問い合わせたところ「発売している」というコメントが出ていたはずですが、結局ユーザーの目の前に現れたのは約1ヶ月遅れの7月下旬でした。

 ここからユーザーはカラーザウルスの理不尽さになやまされることになります。


■いきなりの9月病

 カラーザウルスが発売されたのは96年の7月下旬ですが、ユーザーは購入して間もなく不可解な現象に悩まされることになります。

 9月1日になった瞬間からインターネットに接続できなくなりました。(正確にはWWWブラウジングができなくなるだけでメール送受信は正常)

 当時は私も今ほどインターネットに詳しかったわけでもないため、なぜ接続できないのか全く判断できませんでしたが、今考えるとWWWサーバに接続した際にサーバとカラーザウルス側でやりとりする情報中の日付フィールドが不正となっていたためサーバーが接続拒否をしていたものと考えられます。

 その接続拒否状態をカラーザウルスが適切にエラーとして検出できないため、いつまで経っても画面が表示されないという現象になったようです。

 この問題はNIFTY SERVEのFZAURUSやFENOTE(現在のFPDAJ)で報告され、カラーザウルスのユーザー全てが同じような問題を抱えていることがわかりシャープへのクレームが殺到したはずです。

 程なくして「公式」な対策方法としてWWWブラウジングをする際にはカラーザウルス側の日付を9月以前にするというものが発表されましたが、根本的な改善は1ヶ月程度経った後、やっとザウルスプラザで公開されました。

 これが史上初めて一般向けに公開されたMOREソフトだったのですが、その後に続くバグとの戦いの最初の一歩でしかなかったわけです。


■インターネットでハングアップ

 こちらは様々な条件が重なって発生したようですが、特に画像ファイルを保存しようとしたときにハングアップしてしまいカラザウを簡易リセットせざるを得ない状況にさせられました。

 この問題は今でも発生するので直せなかったバグ(というか根本的な問題かな?)になります。


■苦痛でしかないデイリープラン

 スケジュールやアクションリストにデータを大量に蓄積した状態で「デイリープラン」にタッチしたら...それは苦痛でしかありません。

 いつまで経っても「お待ち下さい」が表示されたままとなります。

 これはデータ検索速度が遅いことが一因なのですが、検索の「取り消し」ができないためにユーザーのイライラ度を極限まで高めました。

 (この機能は初代パワザウまでタッチキーに用意されていましたが、パワザウ2ではインデックスメニューからしか利用できなくなっています)


■情報ファイルのおかしな仕様


■2500円のPIAFS対応の結果は?

 PHSのデータ通信方式であるPIAFSが正式にサービス開始となったのは97年4月ですが、その少し前からカラーザウルスはPIAFS対応のための有償バージョンアップを行っています。

 これは2500円かかりましたが、最新の通信環境が利用できるということで早速バージョンアップしてもらったのですが、インターネット関連とNIFTYの通常通信はPIAFS対応できたのですが、NIFTYのメール送受信だけPIAFS対応できないという「仕様」とされていました。

 NIFTYの通常通信ができてメール送受信ができないなんて!!、信じられるわけがありません。

 アクセスポイントや接続方法、コマンドは両者全く一緒です。 現に、通常接続してメールメニューを使って送受信をすることはできます。

 これを仕様と言い切るシャープの見識を疑いましたが、ユーザーとしてはどうすることもできず改善してもらうために2500円支払ったのに更にバグを入れてもらったような後味の悪い結果となりました。


■他社モデムは嫌い? カラーザウルスのPCMCIAスロット

 こちらはバグではありません。

 カラザウはインターネット接続やWWWブラウズを売り物にしているのにも関わらず内蔵モデムのデータ通信速度が2400BPSと実用にならない速度のためカードモデムが必須の状況でした。

 しかし、カラザウユーザーを泣かせた問題点として市販されているPCMCIAカードタイプのモデムがほとんど利用できなかったというものがあります。

 カードを差しても全く認識しない物、認識するが接続できない物、NIFTYだけ接続できてインターネットの接続ができないものなど多数の人柱ユーザーによって様々な症例が報告されています。

 もっとも、当時メジャーだったメガハーツのXJ3288JPモデルは利用することができたため、カラザウユーザーの多くはこれを購入して利用していました。(後にXJ3288JPが33.6Kbps対応した時にファームが変わりカラザウ側で初期化コマンドを設定しないと利用できないという問題が生じています)

 この傾向はパワーザウルスになっても続いており、モデムは当然としてPHSやデジタル携帯電話のデータ通信カードの認識率も非常に低いものとなっています。

 閉鎖系システムのザウルスだから仕方が無いし、下手に認識できるカードを増やしても正常に通信できない場合はユーザーサポートに対する問い合わせが増えるという問題があるため純正品しか使えない仕様というのは間違いではありませんが、非純正品でも使えるようにしておけばユーザーからみて「ザウルスなら大丈夫」という安心感が得られるわけです。

 こういった問題はNIFTYのFZAURUSやFENOTE(FPDA)で盛んに取り上げられカラーザウルスの評価を下げることになりました。

 カラーザウルスの価格が150,000円しており、純正モデムカードが40,000円とまともに通信をするためには200,000円近いコストがかかる割に得られる物が当時の同価格帯のPCよりずっと下のレベルではユーザーが敬遠するのも無理はありません。


■孤高のフラッシュメモリカード

 モデムカードと同じようにユーザーを困らせたのがフラッシュメモリカードの問題です。

 96年当時でもフラッシュメモリカードといえばATAコンパチブル(SanDISKコンパチブル)が主流となっており、当然これが使えると思っているユーザーがカラザウに差してみては「使えない」という結果に泣くことになります。

 逆に見るとカラザウ用のフラッシュメモリはパソコンで利用できず、フラッシュメモリカードを経由してパソコンとのデータ交換を行うことはできませんでした。

 この時点でフラッシュメモリカードを利用したパソコンとの間でのデータ交換が実現できていればカラーザウルスの使い道はもう少しあった物と考えます。